フローティングスタティックルートについて勉強してみた
本記事の趣旨
フローティングスタティックルートが機能する場合・機能しない場合の条件をCisco Packet Tracerを用いて検証する。
特に出力インターフェースにVLANを割り当てた場合で条件分けを行い、細部の条件を確認する。
フローティングスタティックルートとは
簡単に言えばバックアップ経路みたいなもの。
スタティックルートのAD値は通常1であるが、それを2以上に設定することでメインのプライマリルートがダウンした場合のバックアップルートとしてルーティングテーブルに記載することができる。
(通常時はshow ip routeを打っても出てこず、メイン経路がダウンした時のみ現れる)
構成図
PC1-PC2間の疎通に際し、上側192.168.2.0/24を通る経路をメイン経路とし、下側192.168.3.0/24を通る経路にはAD値をつけサブ経路として設定する。
条件
①メインサブ(G1,G3)どちらもルーテッドポートにアドレスを振った場合
上側が正常時で下側はメイン経路を遮断した状況でのtracert。
メイン経路(ネクストホップ192.168.2.254)を切断した場合、サブ経路(ネクストホップ192.168.3.254)を経由して疎通可能
⇒フローティングスタティックルートとして成立
②メイン経路(G1)はルーテッドポートに、サブ経路(G3)はSVIにアドレスを振った場合
192.168.3.0/24をVLAN30とし、ルーテッドポートではなくSVIとしてCatalyst3650#1に192.168.3.1を、#2に192.168.3.254を割り振る。
こちらもサブ経路を通して疎通可能
⇒フローティングスタティックルートとして成立
③メインサブ(G1,G3)どちらもSVIにアドレスを振った場合
192.168.2.0/24をVLAN20とし、ルーテッドポートではなくSVIとしてCatalyst3650#1に192.168.2.1を、#2に192.168.2.254を割り振る。
こちらもサブ経路を通して疎通可能
⇒フローティングスタティックルートとして成立
念のためCatalyst3650#1のルーティングテーブルを見てみる。
正常時は192.168.4.0/24宛ての経路のNHは192.168.2.254になっている。
一方で、メイン経路遮断時のNHは192.168.3.254に変化しており、フローティングスタティックルートが反映されていることがわかる。
⇒物理インターフェースにVLANが紐づいていても、ダウンした物理インターフェースにのみそのVLANが割り当てられているならば問題なくフローティングスタティックルートが機能すると推測
④メインサブ(G1,G3)どちらもSVIとしてアドレスを振り、メイン経路のVLANを他のポートにも持たせた場合
メイン経路(VLAN20)を遮断してポートをダウンさせる一方で、VLAN20が別のアップしているポートに割り当てられていた場合はフローティングスタティックルートが機能するのか検証する。
イメージとしては上図の感じで、VLAN20がメイン経路のポートだけでなく、他のアップしているポート(=上のCatalystと接続しているポート)に割り当てられていてもメイン経路がダウンしたとみなされるのかを確認した。
結果、メイン経路を遮断してもNHが192.168.2.254(=VLAN20)のままであり、フローティングスタティックルートが機能していないことがわかる(=疎通できない)
結論
以上の結果から、次のことが読み取れる。
1.フローティングスタティックルートが機能するためにはAD値の低い経路(=メイン経路)の物理インターフェースがダウンする必要がある。
2.ただしその物理インターフェースにVLANを割り当てた場合、そのVLANが割り当てられている全てのポートがダウンしている必要がある。
今回の勉強はここまで。